1998年3月30日 (月)

読むとき書くとき気をつける

 ある音楽関係誌での記事のことだ。本題へはいる前のまくらで環境ホルモンのことについてふれていた。

 男子の精子の数が最近は減少している。それは人間の作った科学物質、たとえばゴミ処理場から出るダイオキシンとかが悪い……。というような内容だった。

 読後、どうして音楽雑誌でこんなことを読まされなくてはならないのか理解に苦しんだ。書くことがいけないと言ってるわけではない。事実の確認なしに書かれたと思われるところがまずいのだ。それがたとえ、本題の音楽に関することでなくてもだ。

 まず環境ホルモンについて説明しておこう。環境ホルモンとは、ある科学物質が性ホルモンのような働きをするものを指す。

 性ホルモンとして働くと、メスがオス化してしまい卵が産めなくなるとか、精子が減少するとか、ペニスが発育せず生殖ができなくなるということが確認されている。これは種の存続ができなくなるということにむすびつく。

 環境ホルモンは、非常に微量でも影響がある。現在わかっているものでは、10億分の1パーセントという濃度で影響がでているとされている。これは、いままでの化学物質の汚染基準では、安全か、まったく影響がないとされる数値だ。

 その環境ホルモンとなる物質だが、現在のところはそのすべてが特定できているわけではない。わかっているだけでも、船の塗料に使われている有機スズ。農薬に使われたDDT、洗剤などの界面活性剤として使われているノニルフェニールポリエトキシレート。プラスチックなど合成樹脂の原料となるビスフェノールAがある。

 環境ホルモンについて、世界でいちばんきびしい規制を実施したアメリカでも、現時点で国立環境健康科学研究所によって、確認されているのは、Endosulfan、Nonylphenol、
Vinclozlin、Genistein、Methoxyehlorの5種類だけとなっている。

 これは、8万種類以上あって毎年増加する化学物質を検査している最中のものであり、これから増えることは確実だが、現在のところ、ここにダイオキシンの名前をみつけることはできないのである。

 ここで、例の文章は「なんだか精子が減る有害物質があるみたいよー」と伝え聞き、アブナイものというとダイオキシン。なんだかコワイものだから、いろんなことで悪いものにしてしまえという発想か、そう伝え聞いたものを確認しないで書かれているように思える。

 書くなら、ちゃんと調べてからにしてもらいたい。ダイオキシンならコワイ、コワイ、くわばらくわばらと心配するのだが、ビスフェノールAなどは樹脂の原料だから、コップ、哺乳ビン、食器、缶詰の内側の皮膜、食品の包装材、歯の充填材など、直接口にはいるものに常に接触しているものに使われている。

 わずかに溶けだしてまざっていても、まったく安全と言われている濃度ぐらいしか検出できないだろう。ここが問題なのだ。

 マスコミで発信される情報には、いろいろなものがある。新聞や大手の出版物に書かれているもの、テレビで言ったからと鵜呑みにしてしまわないで、誰が書いたものでも疑ってみないといけないだろう。もちろんインターネットから得られる情報もしかりである。これを怠ると、デマや噂に発展していくんだろうな。このデマや噂が、過去にどれだけひどいことを人間にさせてきたか思い返してみないといけない。

 インターネットにより、情報も発信しやすくなったが、収集もしやすくなった。事実に関しては複数の情報源にあたったほうがいい。また、書く側としては、できるだけ事実を確認して書きたいものです。ハイ。

 この文章を読んでも、すべて信じちゃいけませんよ。事実を含んではいるけど、全部を確認したわけでもないし、真実とは限らないんだからね。まずは、検証力と判断力を養いましょうネ。

■追記 4月13日付けの新聞記事によれば、環境庁はダイオキシンやPCBなど67種類を環境ホルモンとして疑わしき物質として調査研究をすすめ因果関係を立証したいとしている。
 そのため自民党は1998年度補正予算に100億円を盛りこむことを決めたそうである。

■追記2 前出の報道をした新聞が、後日、別の記事でダイオキシンなど67種類の環境ホルモンがあるという書き方をしていた。疑わしいだけで確認はされてないんと違うのか? 前の記事と矛盾するぞと思っていると、さらに後日、ダイオキシンなど環境ホルモンと疑わしき物質という書き方をしていた、疑わしいものと確定しているものでは、まったく違うと思うのだが、その新聞は最大手といわれているのに、社内の校閲もないのだろうか? 新聞にしろテレビにしろ、報道の専門家でさえこの始末なのだから、信用しちゃいかんよ。

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