1998年6月29日 (月)

透けていくものたち

 楳図かずおのマンガは生理的に怖い。絵柄でもって有無を言わさぬ恐怖を描きだす。

 子どものころに読んだ作品に『肉面』というのがあった。実際に顔の皮を剥いでお面にするというものだったが、あまりの怖さに薄暗い室内では読み進めず、途中で読むのをやめてしまった。

 夜のうちには、とても読む勇気がなく、翌日の昼間になるのを待ち、部屋ではなく、人通りの多い往来に座って読んだ。

 それでも「わー」と叫び声をあげて、走り回りたくなるほど怖かった。読むんじゃなかったと後悔しても、もう遅い。目をつぶると絵柄を思い出して、ずーっと怖いのだ。

 そんなわけで、二度と楳図かずおのマンガを読まなくなったかというと、そうでもない。怖い物見たさで、ついつい読んでしまうのだ。読んだあとには、見るんじゃなかったと後悔するのだが、まったく学習能力のないネズミ頭には効果はない。

 そんな、こわーい楳図マンガのなかで、身体が透明になっていく話があった。主人公は色白の美少女だ。といっても白黒のマンガだから、判断のしようがないが。

 最初のうちは、透けるように白い肌とかいうことで、みんなにうらやましがられているのだが、ある日、なんとなく血管とかが透けて、よく見えるようになっているような気がするというように話がすすんでいく。

 実際に、自分の身体とかを見ても、皮膚の下の血管が透けて半透明に見えている部分はあるわけで、誰にでもありそうだと思わせたところで、もう作者の勝ちだ。

 日を追うにつれ透明度の度合いはすすんでいく。だんだん血管がはっきりと見えるようになり。神経やら筋肉の繊維構造がはっきりと見えてくるようになる。

 これが、あのペンタッチで描かれているものだからたまらない。もう途中から読みたくなくなってくるのだが、ストーリーは追いかけたい。そこで、半ページずつ、そっとめくって、怖い絵がなければページをめくるということにして、読んでいった。

 最後には、やっぱりというか「ギャー」と叫んであたりを走り回り、友達がいれば「なぁ、いっしょに読もう」と同じ恐怖を分かち合おうとするような、みっちりと内臓やら血管やら骨やらが皮膚の下から透けている様を描きこんだ少女の絵が描かれていた。

 ストーリーとしては、身体が透けてしまった少女が悲観して、炎の中へ身を投じるという結末だったと記憶している。

 あれから30年(ホントか)。最近のコンピューター機器の流行りは、透明グッズなのだ。マウスやキーボードに透明なプラスチックを使い、中の基板や配線が見えるようになっている物に人気が集まっている。

 そうしたトレンドを受けてか、最新のアップルのデザインは半透明の素材を使ったものが多い。Studioディスプレイや、iMacは半透明で中がうっすらと透けて見える。

 配線は赤や青で、動脈や静脈を連想させるし、基板が見えるだけならいいが、よぶんな構造材や、なんとなく有機的に見える部品が透けて見えるのには、子どものころに読んだ楳図マンガを彷彿とさせて、なんとなくいやな気分になってしまう。

 毎日使っているうちに、もっと透けていったらどうしようなどと、夜も寝られない三球照代状態になるのは火を見るよりも明らかだ。

 やっぱりコンピューター機器は、色白で内部が透けてないほうがいい。

| | トラックバック (0)